教会巡りのその前に。見学のマナーと基礎知識 【長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産】
世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」。
苦難の弾圧と約250年間の潜伏を乗り越え、長崎のキリシタンたちが築いた荘厳な教会は必見です。
しかし、教会は信者にとって大切な祈りの場。観光を目的として訪問する際は教会でのマナーをよく守り、お互いが気持ちよく過ごせるように心がけましょう。
教会の基礎知識
【教会とは】
教会という言葉は「祈りの家、建物」を意味することが多いですが、「キリストを信じる人々の集い、共同体」も意味します。長崎県には、133の教会(主任・巡回教会など)があり、72の小教区を構成し「長崎教区」になっています。
全国にはこのような教区が16ありますが、全国のカトリック信者の14%が集まる長崎は、大司教を中心とする「カトリック長崎大司教区」です。明治以降、初期の教会には正面に「天主堂」と書かれた額が掲げられていますが、これは神「デウス」の中国語表記「天主」を、外国人神父達がそのまま流用して「天主堂」としたものです。
【ミサとは】
キリストが復活した日曜日を「主の日」とし、「最後の晩餐」と、死と復活を記念する祭儀をおこなうようになりました。これが現在のミサであり、信者にとってキリストの体であるパン(聖体)を拝領することでキリストとひとつになる大切な祭儀です。
【教会の主な祝日】
カトリック教会には、年間をとおしてキリストの生涯を記念する「典礼暦」があります。主なものは、降誕祭(クリスマス)12月25日。復活祭(イースター)春分後の最初の満月の後の日曜日。主の昇天復活祭の6週間後。聖霊降臨祭復活祭の7週間後。キリストの聖体=聖霊降臨祭の2週間後。聖母の被昇天8月15日などがあり、復活祭はすべての祝祭日の中心をなすものです。
世界遺産の教会を巡る時、これだけは守っていただきたいこと
教会は、「聖なる建物」であり、信徒の方たちが先祖代々大切に守り伝えてきた祈りの場で、「神の家」でもあります。訪問される場合は、「教会見学時のマナー」をご確認のうえ教会へお越しください。
教会受付者(教会守)が見学者数等の確認を行うほか、見学時の注意事項をお伝えしますので、教会に着いたら、必ず教会受付者に声をかけてください。なお、お帰りの際にも同様に声をかけていただきますようお願いします。
教会見学時のマナー
○堂内では、帽子を脱いでください。
○特に堂内では静かにご見学ください。(堂外でも極力静かにご見学ください。)
○堂内での写真撮影は、禁止です。
○柵内や内陣(祭壇域)及び2階の楽廊には入らないでください。
○堂内での飲食、飲酒、喫煙はご遠慮ください。
○トイレは、事前に最寄りの公衆トイレや「道の駅」等でお済ませください。
(緊急の場合は、信徒用のトイレをご利用いただくことも可能です。)
○酒気を帯びての入堂はご遠慮ください。
○退出時には、出入口のドアを必ず閉めてください。
○堂内にある物(聖書などの私物)には手を触れないでください。
※なお、ミサや冠婚葬祭等、教会行事が行われている時は、入堂をご遠慮いただくことがありますのでご了承ください。
巡礼に関するQ&A
Q:服装に関して気をつけなければいけない点はありますか?
A:服装に関しては自由です。ただ、夏場において肌が露出した服や、極端に短いスカートや半ズボンなどは注意が必要です。カーディガン等があれば大丈夫ですし、いずれにしても常識の範囲内で。
Q:教会堂内で気をつけなければいけない点はありますか?
A:教会堂内では、飲食、喫煙、飲酒は厳禁です。また、教会堂内にある物(祭礼品、装飾物など)には、むやみに手を触れないようにしましょう。なお、祭壇のある一段高くなった「内陣」は、聖職者以外立入りが許されませんので、絶対に入らないでください。
Q:写真撮影は出来ますか?
A:外観の撮影については問題ありませんが、教会堂内の写真撮影は原則的に禁止です。カメラでは写せないものを心のフィルムに残してください。
Q:信者ではありませんが、ミサ(礼拝)に参列しても大丈夫ですか?
A:とても良い経験になるので、ご興味のある方はぜひご参列を。ただし、ミサは信者にとって大切な儀式です。厳粛な気持ちで参列し、途中参列・退席はご遠慮ください。事前に参列したい教会のミサの時間を確認し、「ミサ体験してみませんか」をご確認いただくことをおすすめします。
Q:教会で心が癒されました。何かお礼がしたいのですが……。
A:教会には献金箱というものがあって、訪問された方から感謝の気持ちを受ける箱があります。ここにそのお気持ちを入れられてはどうでしょうか。
■ながさき巡礼についてのお問い合せ
長崎巡礼センター TEL:095-893-8763
教会見学の事前連絡
世界遺産エリアにある教会の見学は、個人・団体を問わず事前連絡が必要です。
※大浦天主堂を除く
長崎の教会の見どころ
「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」に認定された12の構成資産のうち、11の構成資産を有する長崎県。そのうち8つの集落に教会が建てられており、大浦天主堂と併せて9つの教会巡りを楽しむことができます。
多くの教会はキリスト教解禁後に建てられており、ゴシック様式をはじめとする西洋の技術と日本人大工の伝統技術が融合した多様な様式が見どころです。建築方法も、レンガ造りの教会や木造の教会、漆喰の壁や現地の石を積み上げて造った教会など様々。ステンドグラスなどの内部装飾には、長崎に多い椿がモチーフに使用されているものもあり、地域性を感じることができます。
COLUMN
「宗派による違い」を知ればもっと面白い!
キリスト教の宗派は大きく分けて「カトリック」と「プロテスタント」の2つ。宗派によって、教会の装飾や聖職者の呼び方が異なります。教会見学の際はぜひ注目してみてくださいね。
【教会建築】カトリック=豪華、プロテスタント=荘厳・シンプル
【マリア像の有無】カトリック=有り、プロテスタント=無し
【聖職者の呼び方】カトリック=「神父」「司祭」、プロテスタント=「牧師」
もっと知りたい!潜伏キリシタン
17~19世紀、キリスト教禁教政策の下で厳しい弾圧を恐れながらも密かに信仰を続けた長崎・天草地方の人々。「潜伏キリシタン」と呼ばれる信徒たちは、宣教師不在の中で独自の文化を築いてきました。
そんな潜伏キリシタンのストーリーをもっと知りたい方は、こちらの特集をチェック!