第3章 四季の美味しいアート・アクアリウム-1

第3章 四季の美味しいアート・アクアリウム 第3章 四季の美味しいアート・アクアリウム

⽇本の動物を描いた名作『⽇本動物誌』⿂類編から、⻑崎の四季を彩る美味しい旬の⿂を10点ピックアップ。シーボルトの研究助⼿ビュルガーの報告を⼀部添えて。※旬の記載は、「さしみシティ」ガイドブックに準じます。

◆春の⿂

【マダイ(タイ科)- Pagrus major】
マダイの漁獲量は、⻑崎県が⽇本⼀。⾮常に美味で、姿形や⾊が美しいことから「⿂の王様」と呼ばれます。春の旬には、体表に桜吹雪のような桃⾊の斑点が出るため、「桜鯛」とも呼び親しまれています。引き締まった⽩⾝は癖がなく、どんな調理法にも合う万能⿂で、慶事によく使われます。

ビュルガーの報告:
「⽇本のすべての⿂種の中でもっとも⼀般的な⿂である」

【カワハギ(カワハギ科)- Stephanolepis cirrhifer】
カワハギはフグの仲間で、透き通って⻭応えのある⽩⾝もさることながら、海のフォアグラとも呼ばれる濃厚な肝も絶品。新鮮な肝を醤油に溶かして刺⾝をつける肝醤油とするのが定番で、カワハギの最も美味しい⾷べ⽅と⾔われています。

◆夏の⿂

【マアジ(アジ科)- Trachurus japonicus】
江⼾時代の儒学者 新井⽩⽯も「アジとは味なり、その味の美なるものをいう」と記したとおり、アジは味の良い⿂であらゆる調理法とマッチし、⽇本全国で親しまれています。⻑崎の漁獲量は⽇本⼀で、産地では新鮮でこりこりとした刺⾝を、九州らしい旨味のある⽢い醤油で味わうのが醍醐味。

ビュルガーの報告:「⽇本の沿岸では⾮常に⼀般的な⿂で、春と秋によく捕れ、通常塩漬けにされて内陸に運搬される」

【タチウオ(タチウオ科)- Trichiurus lepturus】
タチウオは、平たく細⻑い形状、⽩銀の体表を⼑に⾒⽴てられた⿂。鱗はなく、薄⽪ごと⾷べられるので、調理の際に⼀⼿間かかりません。旬の真夏には、たっぷりと脂がのった上品な⽩⾝を塩焼きやムニエルなどで加熱調理することが定番。鮮度の良いものは、刺⾝でさっぱりといただけます。

◆秋の⿂

【カツオ(サバ科)- Katsuwonus pelamis】
カツオの旬は、年に2 回。春の「初ガツオ」は脂が少なくさっぱりした味わいで、秋の「戻りガツオ」は脂がのった旨味のある味わいが特徴。カツオといえば、やっぱりタタキ。表⾯をさっと炙り、厚めに切った刺⾝に塩やタレをかけて、にんにくや⽟ねぎなどの薬味と合わせていただくのが絶品。

ビュルガーの報告:
「⽇本⼈がもっとも求める⾷料の⼀つで、できるだけ新鮮なものを⽣で⾷べている。とくに夏は健康によく、涼をとる⿂とされ、毎⽇百隻もの⼤量の漁船が⻑崎に戻るのである。乾燥させた鰹節は内陸通商の重要な品⽬で、中国の商⼈によっても輸出されている」

【サバ(サバ科)- Scomber japonicus】
たっぷりと脂を蓄えて旨味を増す「秋サバ」。鮮度が落ちやすいため、刺⾝で⾷べるのは限られた地域で、塩や酢で〆るか加熱して味わうのが⼀般的。最近は、⼿軽で美味しいサバ⽸も⼀世を⾵靡しました。サバの漁獲量⽇本⼀の⻑崎では、⻑崎市の新・ご当地グルメ「サバサンド」もご賞味あれ。

◆冬の魚

【トラフグ(フグ科)- Takifugu rubripes】
⻑崎の養殖トラフグは、⽣産量⽇本⼀。フグには旨味成分グルタミン酸が豊富に含まれ、味わい深く弾⼒があるのが⼤きな特徴で、⽫の意匠が透けるほどに薄切りされたてっさ(ふぐ刺し)が花形料理です。産地⻑崎の冬には、旬を味わう「⼾⽯トラフグ料理フェア」が開催されます。

ビュルガーの報告:「この⼤きなフグは…美味のためとりわけ需要があり、⿂市ではとても⾼価である。ふつう乾燥させて酒の肴として⾷される」

【クエ(ハタ科)- Epinephelus moara】
クエはアラとも呼ばれ、⼤相撲九州場所で⼒⼠が英気を養う「アラちゃんこ」で有名な超⾼級⿂。岩礁で何⼗年も⽣きて100kg 近くにもなる“⿂の横綱”。コラーゲンが豊富で、きめが細かくコクがある美しい⽩⾝は刺⾝や鍋料理でいただくと格別で、産地⻑崎では天然物を料亭で味わえます。

ビュルガーの報告:「⽇本の沿岸で⼤量に捕獲される…とても美味しく、⽇本⼈もとりわけ探し求めている」

【ブリ(アジ科)- Seriola quinqueradiata】
ブリは成⻑に伴い名が変わる出世⿂で、⻄⽇本ではモジャコ、ツバス、ハマチ、メジロ、ブリと呼び名が変わり、縁起物として親しまれています。⻑崎は漁獲量⽇本⼀で、旬の「寒ブリ」は、刺⾝はもちろん、濃厚な旨みが出汁に溶け出すブリしゃぶも絶品、〆の麺や雑炊にもよく合います。⻑崎ではマグロではなく、ブリなどの⽩⾝を利⽤した「⽩い鉄⽕巻き」があるのも珍しい寿司⽂化です。

ビュルガーの報告:「この⿂は⽇本の下級階層の⼈々の重要な⾷料源で、⻑崎から塩漬けにされ輸送されている」

【ヒラメ(ヒラメ科)- Paralichthys olivaceus】
⽔深3〜20m の砂泥地に⽣息する底⿂で、冬になると特に脂がのって⾝が締まり、濃厚な旨味をまとって「寒ビラメ」と呼ばれます。淡⽩で繊細ながら、旨味成分のイノシン酸を多く含むためコクがあり、薄造りの刺⾝のほか、ムニエルなどで⾝をふわっとさせる加熱調理にもよく合います。

ビュルガーの報告:
「左側に⽬をもつこの種は、ヨーロッパの北の海に棲み、右側に⽬を持つオヒョウ類と混同することはできない。…[⽇本では]いつでも、とりわけ春に⻑崎近郊の湾内の砂泥地で捕らえられる。この⿂はたいへんおいしい」

COLUMN

海のチーズ|⽇本三⼤珍味 ⻑崎からすみ

からすみは⻄洋から伝来し、⽇本では⻑崎で初めて質の良いボラの卵を原料に製造されたことから、⽇本三⼤珍味 ⻑崎からすみが誕⽣しました。実は乳酸菌発酵⾷品で、「海のチーズ」と称されるほど、深い旨味とコクがあります。⽇本酒によくあう酒の肴ですが、ヨーロッパではボッタルガと呼ばれチーズのようにパスタに和えられ、実はワインとも相性ぴったりです。ビュルガーの報告においても、⻑崎のボラを使ったからすみについて詳しい記述が残されています。

ビュルガーの報告:
「このボラは⽇本沿岸、たとえば⻑崎湾の⼊り⼝の野⺟崎や島原で、とくに春と秋にあみで⼤量に漁獲される。その卵巣を塩漬けにして天⽇で⼲すと、⽇本でたいへん需要の⾼い⼀種のキャビアがつくられ、それは国内の交易で重要な位置を占めている」

海のチーズ|⽇本三⼤珍味 ⻑崎からすみ-1

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