第2章 ⽇本の⿂を鮮やかにうつす-1

第2章 ⽇本の⿂を鮮やかにうつす 第2章 ⽇本の⿂を鮮やかにうつす

シーボルトの代表作『⽇本植物誌』の下絵のほとんどを描いた天才絵師 川原慶賀は、対を成す『日本動物誌』⿂類編においても数多くの⽇本の⿂を鮮やかにうつしとった。

◆⽇本の⿂のアルバム「慶賀⿂図」

【⿂類の科学的スケッチを極める】
シーボルトお抱え絵師 川原慶賀は、⼤作『⽇本植物誌』の下絵となるアジサイなどの植物図で有名ですが、対を成す『⽇本動物誌』の⿂類編においても多くの下絵を描きました。シーボルトは慶賀に⿂類をスケッチさせる際、⿂類学者ラマルクとキュビエの著作『⿂類の⾃然史』などを参考に、写実的で科学的なトップクラスの⿂類画法を学ばせました。特に⿂類においては、標本では確認できない、新鮮なうちの⽣き⽣きとした⾃然な⾊彩を記録できる慶賀の写⽣画は重要な資料となりました。

【ヨーロッパで図鑑となる「慶賀⿂図」】
川原慶賀が⽇本の⿂を描いた写⽣画は、シーボルトが依頼したものが約100 点、ビュルガーが依頼したものが約400 点と合計約500 点にものぼり「慶賀⿂図」と称されました。このうち半数近くが航海の途中で紛失し、オランダの王⽴⾃然史博物館に届けられたのは半数ほどの256点でした。『⽇本動物誌』の編纂では⿂類編に掲載された161 図版のうち、9 割ほどの147 図版が「慶賀⿂図」から転載されており、ヨーロッパの博物学者からも⾼い評価を得ていたことが伺えます。

【標本いらず、⾼精細なシーボルトのカメラ】
「慶賀⿂図」は、鱗の数、ひれの線、体⾊・斑紋のパターンなども忠実に描かれており、シーボルトのカメラという異名の通り、現在の写真に劣らぬほどの精細さを誇りました。⽣物分類学では新種を公表する際、タイプ標本指定が原則ですが、標本のないカタクチイワシ、ムロアジ、ウロハゼ、ニシキハゼ、ウミヒゴイなどは慶賀の写⽣図だけで新種登録されました。標本なしの記述は学者としてリスクもありますが、「慶賀⿂図」の科学的な正確さが特段信頼されていたことを物語っています。

COLUMN

⻑崎のもう⼀つの彩⾊⿂図|グラバー図譜

⽇本四⼤⿂譜の⼀つに数えられる「⽇本⻄部及び南部⿂類図譜(通称、グラバー図譜)」は、トーマス・グラバーの⻑男 倉場富三郎が、⻑崎の⿂種の豊かさをコレクションする⽬的で作製した⻑崎ゆかりのもう⼀つの彩⾊⿂図です。1912 年頃から⻑崎の画家5 名を雇い、完成まで21 年の歳⽉をかけて、形態・⾊彩・鱗の数まで正確に捉えた、緻密で美しい806 図の⽔彩画が描かれました。⽔産都市 ⻑崎を象徴するこの貴重な彩⾊⿂図は、現在、⻑崎⼤学附属図書館に所蔵されています。

⻑崎のもう⼀つの彩⾊⿂図|グラバー図譜-1

画像引⽤:「さしみシティ」ガイドブック(グラバー図譜箇所抜粋)

⻑崎⼤学附属図書館 ⽇本⻄部及び南部⿂類図譜(グラバー図譜)

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